こんにちは、馬渕まりです。すっかり暑くなりましたね。今回のコラムは、取り上げた明治時代の小説「食道楽」の続きになります。あおいろサークルらしく『糖尿病』に注目してみました。
糖尿病についてこんな記述が
食道楽は春、夏、秋、冬と4部に分かれておりますが、春の巻に糖尿病について触れている部分があります。
「魚でも牛肉でも産地で味が違うから妙だ。牛肉も西では神戸、東北では米沢というが日本の牛は概して味が好いそうだね」主人「そうさ、日本牛のは全体食牛に適した種類だからね。牛を大別すると乳牛と耕作牛と食用牛と三つになるが日本の牛は食用牛の種類に属する。しかし神戸の牛は大概糖尿病に罹っているそうだね。今まで但馬辺りの山の中で働いていたものが急に神戸へ連れて来られて美味い物を食べさせられてそれで運動をせんから人間がそういう場合になったと同じように必ず糖尿病にかかるそうだ。
村井元作 食道楽 春の巻 「五十 梅干しの功」より
糖尿病は遺伝要素が大きく関わりますので、食事や運動不足だけでは語れませんが、生活習慣が大切なことは間違いありません。明治半ばには糖尿病と食事、運動不足との関係が新聞の連載小説で述べられているのに驚きますね。当時から米沢牛と神戸牛は美味いと有名だったのかぁ。
糖質制限、タンパク制限
病人に食物を与える目的も色々ありまして第一には胃腸病患者のように消化吸収の良いものを択ぶ事です。第二には病後の恢復期(かいふくき)や衰弱の予防のために滋養物を多く与える事です。第三には食物の成分を変化させて病気を癒す事です。譬えば糖尿病には糖分を禁じて肉食を勧めるとか腎臓病には肉食を禁じて菜食を勧めるとかいう場合です。
村井元作 食道楽 冬の巻 「巻末、病人の食物調理」より
食道楽の各巻末には付録がついております。春には日用食品分析表、夏には果物料理百種、秋には米料理百種そして冬の巻の付録には病人の食物調理がついています。糖尿病に対して糖質制限を行っていますね。インスリンの発見が1921年ですから、この本が書かれた1903年には糖尿病の治療薬はありません。血糖値を上げないためには糖質制限しか方法がなかったと思われます。同時代の文豪、夏目漱石は糖尿病でしたので、彼の日記や小説にも糖質制限の話が出てきます。日記を見ると漱石は制限食が辛かったようです。
腎臓病に対して肉(タンパク質)の制限を行っているところも興味深いですね!糖尿病性腎症でも進行するとタンパク質制限を行いますが、低栄養にならないよう気を付けなければいけません。食事療法について不安なことや知りたいことがあれば主治医や管理栄養士さんに相談してくださいね。
食道楽(くいどうらく)春の巻、秋の巻、冬の巻は青空文庫で読めますので、興味のある方はぜひ。
…夏だけまだないのね(涙)
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