糖尿病、その病名の歴史【歴史コラム】

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 糖尿病に代わる新たな病名の候補として『ダイアベティス』が発表され話題になっていますね。『ダイアベティス』は英語の病名diabetesに基づいて考えられた呼称ですがどういう意味を持つのでしょうか?今回は糖尿病の名前の歴史に迫ります!

目次

サイフォンのように水が身体を通り抜けていく

 糖尿病は古くからある病気で、エジプトのパピルスにも記録されております。しかし、この時点では「多尿」に対する治療が述べられているものの病名は登場いたしません。
 糖尿病をdiabetesと名付けたのはローマ統治下のカッパドキアに生まれたアレタウス(130-201)です。彼は著書『慢性疾患の原因と兆候』で糖尿病に特徴的な多飲多尿について述べ、続いて”病人は水を飲むことも、水を作ることもいずれも止めることがかなわない。したがって、私には病気があたかもギリシャ語の『サイフォン(diabetes)』のような状態にあるように思える。なぜならば、液体は身体内にとどまることなく、人の身体を階段のように使って去っていくからである”と糖尿病という病気を表現するのにdiabetesを使いました。 
コーヒーを入れる際に使用する『サイフォン』

多尿の病気は他にもあるから

 多尿を呈する病気の代表としては糖尿病の他に、内分泌疾患である『尿崩症』があげられます。長い間どちらの病気もdiabetesと呼ばれていました。しかし、医学の進歩とともに両疾患の区別が必要になり、エジンバラ大学の教授ウイリアム・カレン(1710-1790)が、尿が蜜のように甘い病気に対して”mellitus(蜜のように甘い)“を尿が水のように味気の無い病気には”insipidus(味のない)”というラテン語をdiabetesの後に付け加えました。糖尿病は尿崩症より患者数が多いため単にdiabetesでも糖尿病を指しますが、正確にはdiabetes mellitusで、尿崩症がdiabetes insipidusになります。
 
 今回の名称変更には「尿」が負のイメージを持つことや、糖尿病であっても尿に糖が出ないこともあるなどの理由が挙げられています。ダイアベイティスはなじみがなさすぎるなどの意見もありますけれど、大切なのはどんな名称にするかより糖尿病の方が今まで受けてきた不利益や偏見、差別をなくすことです。お時間がある方はぜひ日本糖尿病学会・日本糖尿病協会合同のアドボカシー活動についてのページをご覧ください。
https://www.nittokyo.or.jp/modules/about/index.php?content_id=46

参考文献 堀田饒 切手にみる糖尿病の歴史 2013年 ライフサイエンス出版



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