「甘いものは食べていないのに、血糖値が高いと言われた」
外来では、こうした声をよく聞きます。
糖尿病は、血糖値が上がりやすい体質になる病気です。その仕組みを理解するには、血糖値のおおもとである糖質が、体の中でどう動いているかを知っておく必要があります。
この記事では、次の3つを順番に説明します。
- 血糖値と糖質とは何か
- 糖質はどんな食べ物に多いのか
- 食べた糖質が、どう消化・吸収されて血糖値を上げるのか
血糖値と糖質とは何か
血糖値は血液の中のブドウ糖の濃さで、ブドウ糖は糖質の一種です。
まずは、この2つの言葉の意味を順番に整理します。
血糖値とは何か
血糖値とは、血液の中のブドウ糖の濃さを表す数値です。
「血液中の糖分の濃さ」と思われがちですが、糖分なら何でもよいわけではありません。測っているのは、ブドウ糖という1種類の糖です。

ブドウ糖は、化学的にはグルコースとも呼ばれます。
そのため血液検査の結果では、血糖値が「グルコース」や、略して「GLU」という項目名で書かれていることがあります。検査結果に「血糖」が見当たらないときは、こちらを探してみてください。
炭水化物と糖質の違い
糖質は、炭水化物から食物繊維を除いたものです。
「糖質=炭水化物」と思われがちですが、同じではありません。
- 炭水化物 = 糖質 + 食物繊維
- 食物繊維は、野菜などに多く含まれます
また、糖質は「甘いもの」だけを指す言葉でもありません。甘くない糖質もたくさんあります。
糖質は、糖の分子がつながる数で3種類に分かれる
糖質は、糖の分子がいくつつながっているかで、3つに分けられます。

ブドウ糖は、このうち単糖類の一つです。
単糖類は、糖質の中でいちばん小さい単位にあたります。甘いものとしてよくイメージされる砂糖は、二糖類の一つです。
二糖類も多糖類も、単糖類がつながった形をしています。そのため、食べたあと体の中で分解されると、最後は単糖類になって吸収されます。
糖質を摂ると、血糖値が上がる
ここまでをつなげると、糖質を食べて血糖値が上がる理由が分かります。

- 糖質を食べる
- その多くが、最後はブドウ糖まで分解される
- 血液の中のブドウ糖が増え、血糖値が上がる
糖質はどんな食べ物に多いのか
いちばんの糖質源は、ごはん・パン・麺類といった主食です。
甘いものも糖質ですが、ふだんの生活で糖質を最も多く摂っているのは主食です。甘いものを控えていても、主食を食べていれば、糖質はしっかり摂っています。
冒頭の「甘いものは食べていないのに、血糖値が高い」の答えは、ここにあります。

主食のほかにも、次の食品は糖質を多く含みます。
- いも類:じゃがいも、さつまいも、山芋、里芋
- 一部の野菜:とうもろこし、かぼちゃ、れんこん
- 豆類:大豆と枝豆を除く豆類全般
糖質は、たんぱく質や脂質と比べて、血糖値に直接影響します。食べたあと血糖値を急に上げやすいのも糖質です。糖尿病のある方は、これらの食品の摂りすぎに気をつけましょう。
ただし、糖質を抜けばよいわけではありません。糖質は体を動かすエネルギー源でもあります。極端な制限は、かえって体に負担をかけます。
食べた糖質は、どう消化・吸収されて血糖値を上げるのか
糖質は、口・十二指腸・小腸で段階的にブドウ糖まで分解され、小腸から血液に吸収されます。
食べたごはんが、ごはん粒のまま血液に入ることはありません。体には、食べたものを吸収できる大きさまで細かく分解する仕組みがあります。これを消化といいます。
食べたものが通る順番

口から入った食べ物は、食道を通って胃に入ります。胃では、胃酸と胃の動きで食べ物がどろどろに溶かされます。
胃には、食べたものをいったんためて、少しずつ次へ送り出す役割もあります。これも、血糖値が急に上がらないための仕組みの一つです。
たとえば手術で胃をとった方では、食べたものが一気に腸へ流れ込みます。そのため、食後に血糖値が急に上がることがあります。
胃の次は十二指腸です。ここに、膵臓から出る強力な消化液が流れ込みます。そして小腸で消化の仕上げが行われ、栄養が吸収されます。
糖質の消化は、口から始まる
ごはんやパン、麺類に含まれる糖質の主役は、でんぷんです。でんぷんは多糖類の一つです。

- 口:唾液に含まれる成分が、でんぷんの分解を始めます
- 胃:強い酸を出していますが、胃液に糖質を分解する働きはありません
- 十二指腸:膵臓の消化液が、でんぷんを二糖類まで分解します
- 小腸:でんぷんからできた二糖類や、砂糖などの二糖類が単糖類まで分解され、ブドウ糖になって血液へ吸収されます
つまり、ごはんの糖質が血糖値を上げるまでには、口・十二指腸・小腸と、何段階もの分解が必要です。
血糖値をいちばん速く上げるものは?
いちばん速く血糖値を上げるのは、ブドウ糖そのものです。
分解する必要がないので、そのまま吸収されます。
糖尿病の治療中に血糖値が下がりすぎる「低血糖」を起こしたとき、まずブドウ糖を摂るように言われるのはこのためです。低血糖のときは、一刻も早く血糖値を上げる必要があります。
手元にブドウ糖がなければ、ブドウ糖を含むジュースも速く効きます。飲み物は胃にとどまる時間が短いので、血糖値をすばやく上げてくれます。
ブドウ糖を含む飲み物の見分け方
ブドウ糖が入っているかどうかは、原材料の表示で見分けられます。

「果糖ぶどう糖液糖」や「ぶどう糖果糖液糖」と書かれていれば、ブドウ糖が入っています。「ぶどう糖」とだけ書かれていることもあります。
- 炭酸飲料:コーラやサイダーなど。ブドウ糖を含む代表的な飲み物です
- スポーツドリンク:ブドウ糖を含みますが、糖が薄めなので、そのぶん量が必要です
- カロリーゼロの飲み物:血糖値はほとんど上がらないので、低血糖のときに飲んでも効きません
裏を返すと、低血糖でもないのに甘い飲み物を飲むと、血糖値を一気に上げてしまいます。前回の記事で、ふだん糖分を含む飲み物を控えましょうとお伝えしたのは、このためです。

多糖類だから安心、とは限らない
「多糖類は消化に時間がかかるから、砂糖より血糖値が上がりにくそう」と思われるかもしれません。
しかし、ごはんやパンのでんぷんは消化がとても速いので、そうとは限りません。多糖類だから安心、というわけではないのです。
次に知ってほしいこと
糖質は、ブドウ糖まで分解され、小腸から吸収されて血糖値を上げます。
では、吸収されたブドウ糖は、体の中でどう使われるのでしょうか。そこで働くのが、血糖値を下げるホルモン「インスリン」です。次回の糖尿病教室では、インスリンのはたらきを取り上げます。
