【第18回】高齢者のHbA1c目標は?【糖尿病教室Shorts】

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こんにちは!
糖尿病を楽しく知るメディア『あおいろサークル』です。

内科医トワ(@DrTowa108)による、糖尿病という病気に対する理解を深めるためのエッセンスをまとめた『糖尿病教室Shorts』シリーズ。

今回は第18回として、「高齢者のHbA1c目標は?」というテーマで簡単にまとめています。

ぜひご覧になってください。


前回の記事では、一般的な糖尿病の方が目指すべきHbA1c値の目標について解説しました。

少し前の時代までは、年齢にかかわらず一律で『HbA1c 7%未満』を目指すことが良いとされていました。

しかしながらご高齢の方の場合は、これとはまた少し別の考え方をしなければなりません

今回はご高齢の方ではなぜ治療目標が変わるのか、実際の目標値はどれくらいなのか、といった点について解説します!

目次

高齢者でHbA1c目標値が異なる理由

まず、『ご高齢の方ではなぜ治療目標値が変わるのか』という点について解説します。

糖尿病をなぜ治療しなければならないのか、治療の目的はなんなのか、は覚えていますか?

結論から言えば、『糖尿病のない人と変わらない寿命と生活の質』を目指すことでした。

そのためには、合併症を進めさせないことが大事。

合併症を進めさせないために、良い血糖値を目指して治療するわけです。

つまり、尖った言い方をすると『合併症に苦しまずに天寿を全うする』ことさえできれば、糖尿病の治療は成功と言えるわけです。

そして、若い方と高齢者とで大きく異なるのは、残された人生の時間(余命)です。

悲しい言い方になりますが、これは揺るぎない事実です。

もうお分かりかもしれませんね。

糖尿病で血糖値が高かったとしても、短期的にはあまり症状が出にくいことは以前お話しした通り。

血糖値が高い状態が続いていても、合併症は数年〜数十年のスパンでゆっくり進行します

仮に同じ80歳で亡くなるとすると、30歳で糖尿病を発症した方は、50年間合併症を起こさないような血糖管理を目指さないといけませんが、70歳で糖尿病を発症した方は、10年間合併症を起こさなければ良いわけです。

50年ものあいだ合併症を進ませないようにするには厳格な血糖管理が必要ですが、10年間で良ければ多少血糖値が高くても許容できるわけです。

これがご高齢の方において糖尿病の治療目標が変わる理由になります。

特にご高齢の方の場合、長い間続けてきた食生活をガラッと変更するのはなかなか一筋縄ではいかないもの。

むやみに厳しい食事療法を行って生活の質を落とすよりも、食事の楽しみと糖尿病治療のバランスを考えていく必要があるわけです

具体的なHbA1cの目標値は?

それでは、具体的にどれくらいのHbA1cを目指して治療していけば良いのでしょうか?

実は、高齢者のHbA1c目標値が設定されたのは2016年。比較的最近のことです。

やや複雑ですが、このようになっています。

ざっくりとした解説をすると、『どれくらい元気な高齢者か』で3つのカテゴリーに分類し、その中で『低血糖リスクが高い薬を使っているかどうか』で目標が決まるわけです。

認知症がなく生活も自立している高齢者(カテゴリーⅠ)であれば、低血糖リスクとなる薬を使っていなければ『7%未満』が目標、インスリンなどを使っている場合は、65歳〜75歳なら『6.5〜7.5%』、75歳以上では『7.0〜8.0%』が目標となります。

反対に、認知症がひどかったり寝たきりのような生活をしている高齢者(カテゴリーⅢ)であれば、低血糖リスクとなる薬がなくても『8%未満』が目標、低血糖リスクとなる薬があれば『7.5〜8.5%』が目標となり、かなり緩めの血糖目標になっていることが分かります。

当時この目標値が発表されて大きなインパクトがあったのは、HbA1cの目標に下限値が設けられたこと

それまでの糖尿病治療では、とにかく『HbA1c 7%未満』を目指すことが正義であるかのような風潮がありました。

しかし、最近は『低血糖を極力起こさないようにしながら良い血糖値を目指す』という方針に変わっています。

昔から糖尿病の治療をしているご高齢の方の場合、『とにかく7%未満を目指す』という価値観が拭えずに、

トワ

今のHbA1cだと、自覚はなくても低血糖を起こしている可能性が高いです。危険なので治療を緩めませんか?

何を言ってるんだ!
そんなことしたらHbA1cが7%を超えてしまうだろ!

みたいな場面も珍しくありません…。

また、高齢の方では低血糖を起こしても低血糖症状に気づきづらいと言われています。

症状がない低血糖(無自覚低血糖)でも、頻繁に起こしていると、動脈硬化が進行したり、認知機能が低下したりする、ということも知られてきています。

最新の糖尿病治療の風潮は『低血糖を避ける』という前提のもとで可能な限りの良い血糖値を目指す、という方針であることを知っておきましょう!


今回の内容は以上となります。

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